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超良書☆虫ぎらいはなおるかな?昆虫の達人に教えを乞う(金井真紀)

うちの5歳の息子が通っている保育園では、ただいま昆虫ブーム。保育園の帰りや休日にお友達と遊ぶときは大体虫捕りをします。お友達と遊ぶときは当然親も一緒になるんですが、親で虫が苦手な人は結構います。

子供って親が大好きなので、親が虫を嫌がったり気持ち悪がったりすれば、子供も同じ感情を抱きやすいと言われています。でも、子供は虫を通じて生き物の命の尊さや生態を学べますし、虫が苦手だとアウトドア遊びもしづらくなってしまいます。なので、子供が「親が嫌がるから」という理由で虫嫌いになってしまうのはかわいそうなので、親の人達にも虫を嫌ってほしくないと思っています。

ということで、お友達の親の虫嫌いをなおす方法はあるのか?と思って色々調べていたところ、「虫ぎらいはなおるかな?」という面白い本に出会ったのでご紹介します。

 

金井真紀(著) – 単行本(ソフトカバー) – 2019/5/16

 

「虫ぎらいはなおるかな?」の概要

どんな内容?

虫嫌い40年余り、でも、本当は虫が好きになりたいのにきらいという作者が、虫に関わる仕事をしている様々な人にインタビューをして、虫嫌いを克服するために模索するお話です。

文章が非常にうまく、160ページくらいの本ですが、1時間くらいでさらりと読めます。イラストも可愛らしいので、虫嫌いの人でもイラストに抵抗感はないと思います。

 

こんな人におすすめ

子供が虫に興味を持ったけど、自分は虫が苦手という親の方には是非読んでもらいたいです。特に、図鑑やおもしろおかしく虫の生態が書かれている本も苦手という方にオススメです。

後述しますが、この本は虫の魅力を中心に書かれているわけではないので、虫を見るのも苦手という人が虫に興味を持つきっかけとしてはかなり良い本だと思います。

 

この本の目次

  • はじめに
  • 1人め 虫は心の休憩所 藤崎亜由子さん
    (虫好きと虫ぎらいの分岐点を調査する教育学者)
  • 2人め あんたら、うまいこと生きてきたなぁ 久留飛克明さん
    (NHKラジオ「子ども科学電話相談」の名物回答者)
  • 3人め 同じ時代、同じ場所に生きている虫のことを全部知りたい 奥山英治さん
    (『虫と遊ぶ12ヶ月』の著者で野遊びの達人)
  • 4人め 虫と、虫が苦手な人とのあいだを繋ぐ 奥村巴菜さん
    (ツノゼミやゾウムシをモチーフにする芸術家)
  • 5人め 害虫を調べると、近代史が見えてくる 瀬戸口明久さん
    (『害虫の誕生』の著者で科学史の専門家)
  • 6人め 虫の気持ち悪さは、人生のスパイス 川合信幸さん
    (「こわい」の心理を分析する認知科学者)
  • 昆虫園に行く
  • 7人め 虫たちは、仕事仲間です 古川沙織さん
    (多摩動物公園の昆虫園ではたらく飼育員)
  • おわりに

※インタビューをした方の概略は理論社HPより引用

 

この本の面白かったポイント

虫だけでなく、虫好きな人の魅力で惹きつける

虫ぎらいを克服するために、虫に興味を持つことは大事です。虫に興味を持ってもらうために、虫の生態を面白おかしく書いている本は結構出ています。ただ、この本のアプローチはちょっと違います。

もちろん虫の魅力について書かれているところもありますが、どちらかというと虫に関わる仕事をしている人達の生き物への圧倒的な愛情や情熱がすごいものがあり、そういった人達がすごく魅力的であることをメインに描かれています。

そして、そういう魅力的な人達が虫の面白さや歴史等を語るので、その内容にも自然と興味を持たせてくれます。嫌いな人が自分の趣味について語っても全く聞く気になれませんが、魅力的な人が語ると、思わずふんふんと聞いてしまいますよね。

虫に興味を持つために虫を知ろうと思っても、虫しか登場しない本だと嫌いな人には抵抗感があると思います。そういう意味で、虫ぎらいを克服したい人の入口として、とても良い本だと思いました。

 

作者の苦手なものに立ち向かう姿がかっこいい

作者が実際の虫を見たり、虫の映像を見せられるシーンがあるんですが、そのときの作者の反応で「虫が苦手」というのがすごくよく伝わってきます。

(1人めの藤崎さんが製作中の昆虫図鑑をPCのモニタで作者に見せるシーン)

「このアシナガバエなんか、メタリックでかっこいいしねぇ」

なんて、まるで飼い猫の写真を見せびらかすような口ぶりだ。ときどき写真を拡大して見せてくれるので油断ならない。わたしはパソコン画面に近づきすぎないように気をつけながら、「あ、ああ、なるほど」などと腰が引けたあいづちを打つ。

 

ダンゴムシの飼い方の本を見せてくれたが、その、子ども向けに描かれたかわいらしいダンゴムシの絵がもうやばい。

「ふーん、飼ってみると好きになりますかね」

などと平静を装いつつ、ダンゴどもを飼うなんてとんでもない、なんてことを言うんだ先生、と内心で猛反発していた。

 

私は虫好きですが、妻が虫が苦手だったので、この作者の行動に何度も「わかる!」と思い、すごく親近感がわきました。虫が苦手な人がそれを克服したというBlogや記事は他にありますが、本当に最初から苦手だったの?と思うことがあります。その点、この作者は、本当に苦手なんだなというのが伝わってきます。

きらいなものをすぐに好きになるわけではない、でも作者が少しづつ虫に興味を持ち、苦手だけれども虫を見に行ったり、絵をかいてみたりするところはすごく応援したくなります。苦手なものに立ち向かっている姿ってすごくかっこいいので、自分も、という気持ちにさせてくれます。

 

文章にあじがあり、とても読みやすい

この作者はとても文章にあじがあり、読むとどこかホッコリする気持ちになります。

(2人め、久留飛さんのインタビューのなかで)

庭先で公園や虫を見かけたら、

「あんたら、うまいこと生きてきたなぁ」

とか、

「最近はこの辺も住みにくくなってきたやろ」

などと声をかけているらしい。ふふふ、虫の専門家というよりは、虫と近所づきあいをしているおっちゃんという感じだ。

 

虫というある意味、尖った内容の本ですが、すごく読みやすい文章で書かれていて、どんどん読み進められます。この文章力があるからこそ、登場人物の魅力が際立って見えますし、作者の虫ぎらいに親近感がわいてくるんだと思います。私には真似するのは難しそうですが、こういう文章の書き方は非常に参考になります。

 

金井真紀(著) – 単行本(ソフトカバー) – 2019/5/16

 

この本を読むと、生き物に愛情を注ぐ人っていいなぁと思わせてくれ、苦手でもすこしずつ頑張ろうという気持ちにさせてくれますので、是非虫嫌いな方は一度読んでみてください。